みっちです。
昨日、神戸から帰ったら、注文した杖が届いていた。
20年前に、股関節の手術を受けた時に、執刀医から
「これからの生活では杖を使うように」と言われた
ものの、「かっこ悪いからいやだ」とかたくなに杖
を使うのを拒否していた。
しかし、8年前、リコネクションセミナーのTAを養成
するトレーニングにロサンジェルスへ行かなければ
ないことになり、交通事情を調べると、LAは都城み
に目的地までたどり着くのに車が必要で、歩かなけ
ばならない距離が半端ないとわかり、しぶしぶ「杖」
を使うことを決めた。
杖は東京に行ったときに、同郷の友達と新宿の東急
ハンズへ行き、微調整ができる物を購入した。
使ってみると、歩行の時、バランスをとりやすく
身体が疲れにくくなるので、それ以来、旅の時には
愛用している。
昨年9月にタヒチへ行ったとき、島へ行くことになった。
大きなクルーザーから、小さいボートに乗って
ラグーンに入り、島に上陸した。
浜辺で杖をついた経験がなかったから、杖を持って
島に入ろうかどうか迷っていたら、ガイドと友人が
持って行った方がいいと進めてくれて、島へ杖を持
って行った。
浜は、島にあたる潮の流れで景色が違った。
パウダーのようなサンゴでできた砂浜、大きな岩
が続き、引き潮で取り残された小魚がいる浜。
小石と貝殻が打ち上げられた浜。
杖はカチカチ音を立てながら、私が前に進むのを
手伝ってくれた。
枯れたヤシの葉や、ヤシの木が行く手をはばんだりも
していた。
杖は、ヤシの尖った葉っぱで肌が傷つくのを
守ってくれた。
島から浅瀬を渡り、バードアイランドと呼ばれる
島へも行った。
海流が思ったよりも早くて、履いていたビーチサ
ンダルが何度も脱げた。その時に杖は、ビーチサ
ンダルを履く手伝いをしてくれた。
まるで「杖」が魔法を知っているかのようだった。
「杖」を上手に使い、島での移動を快適に過ごす方法は、
友人が手際よく教えてくれた。
あまりの手際よさに驚き、理由を尋ねた。
すると、彼女は誇らしげに笑顔で父親のことを
話し始めた。
目を細めながら父親との思い出を語る彼女の目は、
いつしか子供の目に変わっていった。
彼女の父親は、元アメリカ海軍に所属していて
リタイア後、タヒチに縁ができて家族ができた。
彼女は子供のころ、海辺での危機管理を父親に
徹底的に訓練されたそうだ。
私は、その恩恵を時空を超えて受け取ったのだ。
同行してくれたガイドが、
「杖をもってこの島を1周した人は美智子が初めてよ。
私はあなたを誇りに思う」といって、むぎゅっと
ハグしてくれた。
一緒にいた船の仲間も口々におめでとう!と
言ってくれて、ハイタッチした。
心のなかで友人の父親に
「Thank you 」と言った。
帰りは、高波にさらされた。
船のキャプテンとクルーの表情から
尋常ではない様子が見て取れた。
そして、私は船酔いで死んでいた。
日本に帰り、いつもの生活に戻った。
家では杖は使わないので、しばらく放っていたら
出張の時に、杖がきしんでいるのに気づいた。
そろそろ、買い替えの時期である。
先日、ネットで今までと同じものを探した。
簡単に見つけられると思っていたのに、
何千種類の中から同じ1本が見つからない。
キーワードを駆使して、やっと見つけた時には
「また旅に出れる!」という強烈な思いが湧いてきた。
杖は同じモデルを購入して、これで3回目。
2回続けて、紺色を買っていたので、今回は
色を変えようと思い、どの色にしようか悩んで
いたら、私をよく知る友人が、「みっち、2本とも
買ってみたら?」というので、茶色と黒壇を取り寄せた。
この2本の杖は、今度は私をどこに連れて行って
くれるのだろう。
そして、どんな魔法を見せてくれるのだろう。